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自社フリーマガジン 企画・編集・デザイン

2006年12月~2007年12月、1年間という期限付き企画で、『Raprise(ラプライズ)』というフリーマガジンを制作した。隔月発行だったので、年間計6冊出したことになる。通常、クライアントからの依頼に対しデザインを行うのが自分たちの本業であり、自ら作りたいモノを自らの予算を使って作るといったことはまずない。自社ツール(会社案内やパンフレット)を作るのとは訳が違う。フリー誌とは言え、一般の方も目にする、ある意味メディアを自分達で作るということだ。これはかなりの冒険だった。なぜなら、人的な事や予算的な事、全てにおいて絶対条件が揃っている状態でのスタートではなかったからだ。そして、何より最大の問題は、我々はフリーマガジンを作るノウハウなど特別持っていた訳ではなかったということだった。しかも、自分が編集長として関わることになろうとは…。きっと周囲は、「制作会社が、何を始めたんだ…」と興味半分、心配半分で静観視していたに違いない。

いずれにしても、手探り状態で、フリーマガジン制作はスタートした訳だが、創刊時に決まっていたのは、「業界問わず、エネルギーを持った方に取材インタビューしていこう!」ということだけ。そんなだから、最初は試行錯誤の連続だった。まず、誰に取材するか(毎号10名程度)ということに始まり、実際の取材交渉(日時のセッティング、ギャラ交渉等々)、何とか取材交渉を取り付けたら、取材場所の選定&確保、実際の取材(インタビュー&撮影)、ライティング、誌面レイアウト、校正等のやりとりを何度も行い、校了が出たら、ようやく印刷入稿…。細かいことは書ききれないが、とにかく何から何まで、当初はわたしと副編集長の2名で、ほとんどのことを行った。取材対象者は、男女業界問わずと公言したものだから、企業の社長~著名人(タレント、歌手、アーチスト等)まで、取材交渉&取材の日々。なにせ、知名度も認知度もない媒体なので、取材交渉には正直苦労はしたが、知名度がなくても強い想いがあれば相手に伝わることもあるんだなということを身を持って体感。

その時のフリーマガジン作りにおいて、周囲で話題にこそなったものの、会社が何か儲かったかというと、特別直接的な売上としての効果はその時点では得られなかった。しかしながら、やり始めた時点で私にはある一つの確信めいたものがあった。これをやり終えた時の自分達にとって、間違いなくゆくゆくは大きな財産になると直感的に感じてたのだ。実際、あれから5年経った今、フリーマガジン作りのノウハウは、今では企業に対して、販促ツールとしての『企業マガジン(情報誌や業界誌等)』の提案及び制作する上で多いに役立っている。むしろ、わたしの中ではそれを一番の得意中の得意とするデザイナーになってしまった。日常仕事をしていると、どうしても目先の結果(売上)のみに焦点をあてて考えてしまうことが多い。勿論、これはこれでとても大事なことだ。但し、3年後、5年後、10年後にやった意味が出てくる事もあると言うことも忘れてはならない。そして、自ら体験してみることが最大のノウハウを得られる、最良の方法なのではないだろうかと今改めて思う。

●エネルギーチャージマガジン『Raprise(ラプライズ)』読んでエネルギーチャージする!をコンセプトに2006年12月に創刊したフリーマガジン。都内主要都市(青山、六本木の駅ラック、TSUTAYA内ラック、その他カフェ等)を中心に配付。全6号。当初の予定通り1年間の継続発行を達成。また、Rapriseからの展開として生まれた『中村 中 PHOTOBOOK』はネットからしか購入できない限定企画として話題に。

発行  :株式会社Raptor
編集長 :安永成隆
副編集長:本間貴志

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